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家庭で育ち、学校で学び、社会の中で生きていく

― 柏の葉学園が大切にしている「社会との交流」について ―

子どもの成長を考えるとき、私は大きく三つの教育の場があると考えています。

家庭教育を土台として、学校教育で学び、社会教育の中でそれを実際に生かしていく。

もちろん、教育はこのように単純に三分割できるものではありません。しかし、それぞれには異なる役割があります。

家庭には家庭の価値観があります。
学校には学校として教えるべき知識や学びがあります。
そして社会には、自分とは異なる考え方を持つ人々とともに生きていくためのルールがあります。

子どもが成長するということは、この三つの世界を少しずつ行き来しながら、「自分はどう生きるのか」を身につけていくことではないでしょうか。

家庭教育は、子どもの一番最初の土台

教育基本法第10条では、父母その他の保護者が子どもの教育について「第一義的責任」を有するとされ、生活習慣、自立心、心身の調和のとれた発達などについて家庭教育の重要性が示されています。

ですから、

「わが家ではこう考えています」
「家庭ではこう教えています」

ということ自体は、とても大切なことです。

家庭ごとに生活習慣も違います。
宗教観も違います。
人生観も違います。
善悪についての考え方にも違いがあります。

それぞれの家庭が大切にしている価値観は、原則として尊重されるべきものです。

しかし、ここで一つ考えなければならないことがあります。

家庭の中で大切にしている価値観と、社会の中で全員が守るべきルールは、必ずしも同じではないということです。

社会には「法律」「倫理」「価値観」という異なる層がある

私たちが社会で生きていくとき、さまざまな判断基準があります。

まず、法律があります。

法律は、社会生活を営むうえで守らなければならない共通の基準です。「私はそう思わない」「うちの家庭では違う」という理由だけで、法律上のルールを無視することはできません。

その外側には、倫理や社会的な規範があります。

挨拶をする。
約束を守る。
相手の話を聞く。
人を傷つけない。
公共の場所では周囲に配慮する。
困っている人がいれば助ける。

こうしたことのすべてが法律に書かれているわけではありません。

しかし、多くの人と共に生きるためには欠かせないものです。

さらに、人にはそれぞれ宗教観、思想、哲学、人生観があります。

「人は何のために生きるのか」
「何を善いことと考えるのか」
「人をどう愛し、どう支えるのか」

そこには唯一の答えがあるわけではありません。

だからこそ社会では、自分の価値観を持つことと、異なる価値観を持つ他者を尊重することの両方が求められます。

これこそ、家庭の中だけでは経験することが難しい「社会で生きる学び」だと考えています。

柏の葉学園が大切にする「社会との交流」

柏の葉学園には、「社会との交流の促進」という大切な考え方があります。

私たちは、この言葉を非常に重く受け止めています。

社会教育法では、「社会教育」を、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年や成人に対して行われる組織的な教育活動と定義しています。

また教育基本法第12条でも、「個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育」という考え方が示されています。さらに第13条では、学校・家庭・地域住民などが、それぞれの役割と責任を自覚し、相互に連携・協力することが求められています。

柏の葉学園は、法制度上の区分だけで捉えるのではなく、子どもたちが社会との関わりを学び、実践していく場として、社会教育的な役割も担っていると私たちは考えています。

少なくとも、私たちが行おうとしている、

社会と出会うこと。
人と関わること。
異なる考え方を知ること。
自分の思いを伝えること。
相手の思いにも耳を傾けること。
失敗しながら社会との関係を学ぶこと。

これらには、明らかに社会教育的な役割があると私たちは考えています。

「家ではこうしています」だけでは解決できないこと

施設を運営していると、

「自宅では認めています」
「うちではこういうルールです」
「本人が嫌がっているので、させないでください」

というご意見をいただくことがあります。

もちろん、ご家庭の考えは大切に伺います。

しかし、私たちは家庭の代わりをする場所ではありません。

家庭の中で何を認め、どのような生活をするかは、基本的には家庭教育の領域です。

一方、柏の葉学園には複数の人がいます。

自分だけではありません。
他の利用者がいます。
職員がいます。
地域の人がいます。
そして、その先には社会があります。

そのため、家庭では認められていることであっても、共同生活や社会との関係の中では一定のルールが必要になることがあります。

これは、家庭の教育方針を否定するという意味ではありません。

家庭のルールと、社会のルールには違いがあることを学ぶ。

それ自体が、社会で生きていくための大切な経験なのです。

「自由」とは、何をしてもよいということではない

私たちは子どもたちの自由を大切にしています。

しかし、本当の自由とは「自分の好きなようにしてよい」ということだけではありません。

自分に自由があるように、相手にも自由があります。

自分に気持ちがあるように、相手にも気持ちがあります。

自分には自分の家庭の価値観があり、相手には相手の家庭の価値観があります。

そこで必要になるのが、

法律を知ること。
社会のルールを知ること。
倫理を考えること。
自分とは違う価値観を知ること。
そして、自分で考えて行動すること。

です。

私たちは、ただ子どもを管理したいのではありません。

「なぜ、このルールが必要なのだろう」

「自分の行動によって相手はどう感じるだろう」

「自分も相手も大切にするにはどうすればよいだろう」

そうしたことを、子どもと一緒に考えていきたいのです。

家庭と施設は、同じ役割でなくてよい

教育基本法が示しているのも、「全部を家庭が担う」「全部を学校が担う」という考え方ではありません。

家庭には家庭の役割があり、学校には学校の役割があり、地域や社会にも役割があります。教育基本法第13条が、それぞれの「役割と責任」を踏まえた連携・協力を掲げていることは、とても重要だと思います。

だから私たちは、ご家庭の教育方針を柏の葉学園がそのまま再現することが「連携」だとは考えていません。

家庭では家庭だからこそできることを。

柏の葉学園では、家庭とは違う人々と出会える場所だからこそできることを。

そして社会に出たときには、さらに多様な人々との関係の中で生きていける力を。

それぞれが担っていけばよいのではないでしょうか。

社会で「よりよく生きる」を一緒に考える

柏の葉学園が目指したいのは、子どもに一つの価値観を押しつけることではありません。

家庭の思想や信条を否定することでもありません。

反対に、家庭の価値観だけを施設の中に持ち込み、それをすべての人に適用することでもありません。

私たちが子どもたちと一緒に考えたいのは、

「さまざまな人がいる社会の中で、自分らしさを失わず、同時に他者も尊重しながら、どうすればよりよく生きていけるのか」

ということです。

家庭教育を土台にする。
学校教育で知識や考える力を身につける。
そして社会との関わりの中で、それを実践していく。

法律という共通のルールを知り、倫理について考え、さまざまな思想や宗教観、人生観が存在することを知る。

そして最終的には、誰かに言われたからではなく、自分自身で考え、選択し、その選択に責任を持てる人になっていく。

「社会との交流の促進」とは、単に外出したり、人に会ったりすることではありません。

社会の中に自分とは違う人がいることを知り、その人たちと共に生きる方法を身につけていくこと。

柏の葉学園は、そのための経験を子どもたちと積み重ね、社会でよりよく生きていくための方法を、一緒に考え、支援し、提供する場所でありたいと思っています。