「塩梅(あんばい)」という知恵
子どもたちによく話す言葉があります。
「塩梅を考えなさい。」
今では「あんばい」という言葉を耳にする機会も少なくなりましたが、とても日本らしい、美しい言葉です。
料理では、塩が多すぎても少なすぎても美味しくありません。
だから「塩梅」。
ちょうどよい加減を意味する言葉です。
この「ちょうどよい」は、人との関わりにも当てはまります。
冗談は楽しいものです。
みんなで笑い合える時間は、とても大切です。
でも、笑っているのが自分だけで、相手が笑えなくなったら、それはもう冗談ではありません。
あだ名も同じです。
親しみを込めて呼び合うことは、仲の良い証でもあります。
しかし、相手が嫌だと感じた瞬間から、それは親しみではなく苦しみになります。
ちょっかいを出し合うことも、子ども同士の楽しい遊びです。
ところが、やり過ぎれば喧嘩になります。
だから私は子どもたちに伝えます。
「塩梅を考えよう。」
行き過ぎないこと。
やり過ぎないこと。
そして何より、相手の表情や様子をよく見ること。
「今、相手は楽しそうかな。」
「嫌な顔をしていないかな。」
そんなことを考えられる人は、人に優しくなれます。
さらに大切なのは、自分自身を少し離れたところから見ることです。
自分では「これくらい大丈夫」と思っていても、周りから見ると行き過ぎていることがあります。
自分を俯瞰して見られる人は、自然と塩梅の良い人になっていきます。
この「塩梅」は、人間関係だけではありません。
子育てもそうです。
厳しすぎても苦しくなり、甘やかしすぎても育ちません。
植物も、水を与えすぎれば根が腐り、少なすぎれば枯れてしまいます。
どちらも「ちょうどよい加減」があります。
その「ちょうどよい」は、毎日同じではありません。
相手を見て、その日の様子を見て、臨機応変に変えていく。
これこそが昔から日本人が大切にしてきた「中庸」の考え方なのだと思います。
人生には、正解が一つしかない場面よりも、「塩梅」が問われる場面の方が、ずっと多いのです。
だからこそ、知識だけでなく、「加減のわかる人」を育てたい。
それが、人と気持ちよく生きていくための、本当の学びなのではないでしょうか。
